書籍紹介:「異文化理解力」マネージングだけでなく、読み物としてのクオリティも高い一冊

近年、ビジネスの現場でも盛んに言われる「ダイバーシティは大事」、「多様性を認めよう」、などと言われるが、そもそも自分とは異なる文化の人々が、ビジネスで直面する事象に対しどのような考え方をするのか想像ができないので、多様性を認める以前の話であるし、またどのようにマネージングする(付き合っていく)のが良いのかもわからなかった。

そこで、amazonで非常に評判の高かった異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養 エリン・メイヤー (著), 田岡恵 (監修), 樋口武志 (翻訳) を読んでみた。

所感

本書は、ビジネスにおいて異文化を理解するのに役立つ8つの軸を紹介し、各項目ごとに軸の両極端にいる人々が集まるとどういう弊害が生じるか、またどのようにそれを解決していくことができるかを紹介している。 本書の面白かったところは、

  • ただ抽象的に異文化が述べられているだけでなく、事例が豊富あり、(特に自分に近い文化圏の話だと)非常に面白いということだ。本書の中にも書いてあったが、異文化を理解しようとすることはなかなか苦しいことであるし、硬くなりがちな話が、この事例によって非常に興味をそそられたのですんなり読める。

  • 実はドメスティックな日本人しかいないような職場でも、有用な知識というところ。

2点目を補足すると、例えば、締め切りへをどれだけちゃんと守るか、個人プレーかチームプレーどちらを好むかなどは人それぞれ異なっているが、自分とは(わずかにでも)価値観が異なっている人をマネージングしたり付き合わないといけない。実は本書はそういうときにどのような心持をすればいいのか、どう対処するのが得策か、など示してくれた。

お題は異文化理解という小難しい話(しかし必須のスキル)だが、事例がとても具体的で、海外のビジネスで直面する課題でどんなものがあるか(文化の差異はスケールダウンするので、そっくりそのまま日々の日本の職場に置き換えられるわけではないが、似たような事例は普段の職場でも散見される)、どう解決したかを単に読む読み物としても非常にオススメだ。 特に最近は、仕事に対する取り組み方などはジェネレーションギャップが増してきていると思う。 世代が異なる、後輩、部下と接したり指導する場合にも使える知識やティップスが詰まっていた。

下記に、導入部分の簡単な説明と全体について記載している。参考にしていただければ幸いだ。

内容

  • 著者のエリンメイヤーはINSEADの教授で文化間のマネージメントを専門に長年教鞭をふるう中で、様々な事例に出会い、本書の核となるカルチャーマップを発明した。

よく、ステレオタイプ的に「アメリカ人はローコンテクストなコミュニケーションをする」と言うと、主語がでかいとか、そうじゃない人もいるなどと言われ、もっと個人を注視したほうがいいといわれる。 そのような指摘はもっともだと感じるが、一方で、各文化における傾向文化的コンテクストは存在するのではないか、と著者は説明している。 やはり異文化理解において性格の違いに寛容になるだけでは足りず、また、文化的な傾向を無視することは個性を見誤る原因になる。 ただし、同じ文化圏の中でもばらつきはあるので、それを分布として本書では表現している。また、文化的な傾向というのは絶対的なものではなく、あくまで抽象的なものであるというところも本書では口酸っぱく強調している。

  • カルチャーマップとは下記の8つの指標において、各国がどこに位置するかを示した図である

  • コミュニケーション ハイコンテクスト vs ローコンテクスト

  • 評価 直接的なネガティブフィードバック vs 間接的ネガティブフィードバック
  • 説得 原理優先 vs 応用優先
  • リード 平等主義 vs 階層主義
  • 決断 合意志向 vs トップダウン
  • 信頼 タスクべース vs 関係ベース
  • 見解の相違 対立型 vs 対立回避型
  • スケジューリング 直線的な時間 vs 柔軟な時間

本書では、この8つの事柄に関して、まず複数の事例で文化的衝突の事例を紹介(この事例が面白い)し、次に各国間でのカルチャーマップの相対関係を提示しながらどうしてそのような衝突関係が発生したのかを説明している。 そのうえで、解決策を示して各章を締めくくっている。